浅羽莢子のFine, Peace!

文芸翻訳家のぐうたらブログ。これなら続くかも。 100%真実を述べているとは限りませんが、たぶんいろんな意味でイメージダウンでしょう。

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やれることはやりました

2006年05月09日(Tue) 13:14:20

今日、私としてはとても思い切ったことをしました。
松竹気付で山田洋次監督に手紙を差し上げたのです。
もう投函してしまったので取り消せません。
だからここに書いてもいいかなと・・・

そもそも手紙を書こうなどと思った理由ですが、
きっかけは先週、「武士の一分」の公式HPが更新されたとの報に、
わくわくしながら覗きに行ったことです。
トップページに記された英文に口があいてしまいました。
これでは、その上に記された、「一分」という言葉を説明する日本文の意味と、
微妙に違ってしまう・・・
もっと直訳したほうがニュアンスが一致するのに・・・。
しかも冠詞が間違っている。
HonorのHは発音しないので、「a」ではなく、
母音の前と同様に「an」にしなければいけない。
職業病かもしれませんが、
待ちに待った拓哉さんの映画であるのになんということ、
と思ってしまったわけです。

昨年の秋、拓哉さん主演で新作を撮ると発表されたとき、
海外の複数の映画関係の大きなサイトにも、
すぐに速報として掲載されました。
でもそのとき、英訳されたタイトルが
「The One-Line Samurai」になっていたのです。
「一分」を「一文」と誤解して訳したためではないかと思いました。
これがそのまま英語タイトルに決定してしまうと、
読んでも意味がわからないうえに、
映画を見ても、なぜそういうタイトルになったのか解明されないのではと、
原作を読んでみて不安になりました。

それでも、あれは速報だから、実際の公開前には、
海外の配給会社側にニュアンスをきっちり伝えて、
必ずしも直訳でなくても、
誤解されそうなタイトルは回避できると思っていました。
まったく違う、でも映画の精神を伝えるすてきなタイトルがつくなら、
それはそれでいいかと。
それが、公式HPの英文を一読し、もしかしたらだめかもと危惧を抱いたのです。

英語を操れる日本人が今までになくふえている昨今ですが、
ふだん眼にする英文の多くは不正確なものです。
ネイティブ・スピーカーなら決して書かない不思議な文章が横行しています。
一番多いのは冠詞の間違いですが、
一見まともそうな文も、細かいところがおかしいことが多く、
大手の企業の商品ラベルなどもよく読むと噴飯ものだったりします。
英語を母国語としている人に
チェックしてもらっていないのだろうかと不思議になります。
それくらいのチェック料など、大企業の予算を考えれば微々たるものなのに。

まあ、日本人の日本語もあやしくなっている時代ですから、
ネイティブ・スピーカーだからといって、
正確で美しい英語が書ける保証はどこにもありません。
いわんや、その人が日本語の微妙なニュアンスを
正しくくみ取れる保証においてをやです。
日本語の伝わり方が悪ければ、正しい英訳になるわけがありません。

とにかく、昨秋、タイトルの英訳を見たときから、
これはダメもとで松竹にメールなり手紙なり
出したほうがいいかもと考えていたのですが、
まさかこれほど早く、ちらしだの何だのが配布されだすとは思っておらず、
すっかり後手に回ってしまいました。

それでも、監督に直訴(!)すれば、
もしかしたら、海外公開には修正が間に合うかもしれないと、
あわてふためいて手紙をしたためたわけです。
今まで、「ご意見・ご感想」を求めるメールアドレスに送ることはあっても、
ここまでしたのは初めてです。

監督に読んでいただけるかどうか、
読んで下さったところで管轄違いかもしれず、
またすでにどうにもならないタイミングかもしれないのですが、
ここで拓哉さんのために何の努力もせず、
指をくわえて見ているようでは、
何のために長年、英語を日本語、日本語を英語に、
少しでも本来の意図が正確に伝わるよう置き換える腕を
磨いてきたのかわかりません。

手紙の末尾には、僭越な内容のお願いとはわかっていますが、
ただただ、「武士の一分」が日本はもちろん、
世界の映画史にも残る名作となることを願うあまりであることを、
察していただけないでしょうかと書きました。

そして、このところパソコンや携帯でばかり文章を書いてきたゆえの、
自分の字の汚さに落ち込みました・・・。
水茎の跡うるわしい字のほうが、成功確率は高いですよね。

どうか、松竹の誰かしらが検討してくれますように。
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コメント

素晴らしいです!
有難うございました!
英訳が正しくないと仮に仏語、独語等の他の言語に訳した際にも意味が違うものになってしまう可能性が大だと思います。
浅羽さんの木村さんへの強い愛情がよく分かって感激です!
本当に有難うございました。
浅羽さんのお気持ちは山田監督にも絶対に届くと信じています。
これからも拓哉君のことよろしくお願い致します!
by 妙子
URL
2006-05-12 金 23:51:49
編集
ありがとうございます
妙子様

某所でいつも、ご活躍を拝見し、
自分もやるときはやらねばと思っていました。
ご支持いただけてうれしいです。
by 浅羽
URL
2006-05-13 土 12:18:40
編集
お返事が戴けるなんて!
お忙しいのにお返事戴けるとは思ってもいませんでしたのに、しかもお気にとめて戴いていたとは!感激でございます!

タイトルをつけるというは大変な作業なのですね。その作品のもっとも重要なポイントになると同時に、それによって読者や鑑賞者の関心を最大限に促す役目を負うのがタイトルですものね。
「武士の一分」が映画の本質をうまく表現した英訳になりますようにと祈るばかりでございます。

新しいお仕事の完成を心よりお祈りいたしております!
by 妙子
URL
2006-05-14 日 10:27:23
編集

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